いいがやクリニック - 目黒区緑が丘、泌尿器科・内科・外科・皮膚科

おしっこについて

おしっこの出る仕組み

健康な若い方なら、膀胱にお小水がたまると自然に尿意を感じ、トイレまで行って用を足します。このときの尿意を初期尿意といいます。

もちろん、近くにトイレがない場合や、トイレに立てないような状況ではある程度我慢します。これ以上我慢できない状態になると、身体にブルブルきて、漏らしてしまいます。このときの尿意を最大尿意といいます。

一般に初期尿意は100~150ml、最大尿意は300~400mlの尿がたまったときに感じるとされています。

排尿の判断をするのは、脳の大脳皮質統合野という部分です。その働きによって、初期尿意を感じなくても前もって用を足す、といったことができます。しかし、例えば認知症になってしまうと、トイレでないところで用を足してしまったり、トイレに行くまで我慢できなくなったりします。

通常、排尿のときは腹筋、横隔膜に一瞬力を入れるだけで、あとは膀胱が腹圧を察知して、勝手に収縮してくれます。この際、尿道を尿が通過するのが気持ちよくわかります。排尿後に尿が残る場合も、健康な成人であれば50ml以下程度です。そこで、もう一度力むと残尿は出てきます。

ただし健康な方でも年齢を重ねていくと、尿道に尿が残ってしまい、下着を汚したりするようになります。これは自然に起こることであって、決して病気にかかったということではないのです。

では次の各項目で、おしっこや膀胱にかかわる病気についてご説明しましょう。

腹圧性尿失禁について

重いものを持ったり、くしゃみや咳で思わず尿が漏れてしまう・・・

中年以降の経産婦さんは、重いものを持ったり、くしゃみや咳をしたりすると 思わず尿が漏れてしまう、ということがしばしばあると思います。エアロビクスをしている最中に、という経験のある方もいるのではないでしょうか?

女性の身体には、男性と違って膣という空洞があります。このため骨盤庭筋群という筋肉が、ハンモック状になって膀胱や子宮、直腸を支えているのです。

尿漏れを解消するために、腹筋や背筋、臀筋を鍛える女性が多いようですが、使っている筋肉が違うので、これはあまり役に立ちません。むしろこれらの筋を使わずにお尻の穴を"すぼめる"のが有効です。はじめは、腹筋や臀筋に力が入らないよう、すぼめながら手を当てて確認してみてください。

こうした理学療法がうまくいかない場合、薬物療法を併用します。しばらく試してみて効果が不十分であれば、手術もしくは子宮内ペッサリーによる治療が保険適応されます。ちなみに、突然抑えきれない尿意が起こってしまう過活動膀胱との合併もよくみられます。

膀胱炎について

お小水の我慢し過ぎはよくないと聞くけれど?

膀胱炎は、単純性膀胱炎(急性)と、複雑性膀胱炎(慢性)に大別されます。治療には抗生剤を用いますが、一般的には一週間以下の服用で回復します。

単純性膀胱炎は思春期以降の女性に特有のものです。肛門周囲の腸内細菌が外陰部に付着し、それが尿道を通って膀胱内で繁殖してしまうのです。そのままにしておくと、一般には 4~6時間で膀胱炎が完成してしまいます。

細菌が付着してから炎症になるまでの時間はGolden Timeと呼ばれます。水分摂取が少なく、半日もトイレへ行かなかったり、身体が冷えたりすると このGolden Timeが短くなってしまうこともあります。特に性交渉の後はお小水を我慢することが多いので、注意を要します。

一方、複雑性膀胱炎は、残尿があるために繰り返して症状が起きたり、抗生剤が思うように効かないために治療が難渋するものをいいます。また、膀胱内に結石や腫瘍があるためになかなか治癒しないケースもあります。

抗生剤がなかった江戸時代以前には、水分を摂取したり、身体を温めることで膀胱炎を治療していました。皆様もこれを肝に銘じて、水分を摂ること、身体を冷やさないことを心掛けてください。

最後に、膀胱炎では決して発熱しません。膀胱炎の先行症状の後、高熱が出るような場合は腎盂腎炎の可能性がありますから、専門医を受診してください。

過活動膀胱について

トイレに行きたくなるのが心配で外出できない・・・

一般に、尿がある程度たまるまでは尿意を感じないものです。しかし過活動膀胱と呼ばれる状態になると、突然抑えきれない尿意を感じ、居ても立ってもいられなくなったりします。これを切迫感といって、場合によってはトイレに行くまで我慢できず、間に合わないこともあります。

切迫感は、水の音を聞いたり、極度に緊張したりしたとき、また自宅の鍵を開けている最中に起こることもあります。ひどくなると、外出や旅行の間も心配が絶えず、引っ込み思案になってしまいます。

本来、初期尿意以下の尿量では、大脳に排尿を促す電気信号は伝えられないのですが、過活動膀胱でなぜそれが起こってしまうのか、まだ原因はハッキリしていません。ある一定の条件下で起こる反射とも考えられています。

治療法としては、抗コリン剤を服用するのがとても有効です。検尿で、感染症・結石などが無いこと、および、残尿が無いことを確認して、投薬を行います。

また、薬以外の治療法としては、一度、切迫感が起きても我慢してみること。切迫感をやり過ごすと、尿意は消えてしまいます。

ただし、前立腺肥大症のある方は、まず、前立腺肥大症の治療からはじめます。それだけで過活動膀胱まで治ってしまうこともあります。

神経因性膀胱について

神経が傷つくと、お小水が出にくくなる?

排尿困難や頻尿、失禁などの症状を排尿障害と呼びます。

若者に急性排尿障害が起こっていて、発熱や痛みがないような場合、真っ先に疑われるのは脊髄疾患です。

"おしっこの出る仕組み" でお話しした通り、排尿の判断をするのは脳の大脳皮質統合野ですが、実際に排尿するには、脳の判断を膀胱へ伝える仕組みも必要になってきます。

実は、その役目を担っている第一次中枢が、脊髄中の仙髄という部分にあるのです。つまり、脊髄が正常に機能していなければ、排尿障害が起こる可能性も高くなるわけです。

ほかに、胸椎疾患がある場合も "排尿したいのに尿道が閉じてしまう"、排尿筋尿道括約筋協調不全(DSD)という現象が起こることがあります。また、足の感覚鈍麻が起きる前触れとしても、排尿障害が現れたりします。

高齢者の排尿障害は、脳出血、脳硬塞の後遺症としてよく見られます。はじめは排尿困難になり、3~6ヶ月経ると逆に頻尿が現れます。最近では、この症状も抗コリン剤で改善されるようになってきました。

パーキンソン病などでも、畜尿障害がしばしば見られます。また直腸や子宮は膀胱と近接していますので、直腸癌、子宮癌などでも、術後、排尿障害が見られることもあります。

小児によく見られる排尿障害の原因が、精神的神経因性膀胱です。例えば、学校へ行くのにストレスを感じたりすることで起こってきます。ストレスが原因で腹痛を訴えたり、頭痛を訴えたりというのはよく聞きますが、膀胱の症状を訴えるお子さんもいるのです。

血尿について

たった一度きりの血尿が、悪性腫瘍のサインかもしれない!?

肉眼的血尿

一見して血の色と分かる血尿が出る場合で、それ以外に症状がないものを無症候性肉眼的血尿といいます。

無症候性肉眼的血尿がある方の中で、平均して30%、60歳以上ですと70%程度の方に悪性腫瘍が見つかります。もちろん、排尿時の痛みや、側腹部痛がある場合はこの限りではありません。

無症候性血尿の場合、まず膀胱腫瘍腎盂尿管腫瘍が疑われます。腎癌の場合は、腎臓そのものから発生してくるので、尿路に浸潤してくるまでは、血尿は見られません。

その他、良性疾患では、発作を伴わない腎盂結石Nut Cracker症候群特発性腎出血などがあります。ただ、原因不明とされる特発性腎出血は、尿管鏡の進歩により、微小の粘膜からの出血、腫瘍などの原因が見つかるようになりました。

一度でも無症候性肉眼的血尿のあった方は、必ず、来院してください。一度で出血が収まったからといって、悪性腫瘍が原因でないとは限りません。そのまま1~2年経っても出血がないために、本人は"治った"つもりでいる・・・ということもあるのです。

苦い経験を教訓とするべく、よく先輩から教えられた話があります。

無症候性肉眼的血尿がありながら、「血尿が出るのは腎臓結石を患っているせいだ」と信じきっていた患者さん。数年後になってからやっと、実は浸潤性の膀胱癌が存在していたとわかったのだそうです

出血しなくなったから、度々出血するわけではないからといって、他の病気のせいにしたり、治ったものと思わないことです。どうぞ来院して、然るべき検査を受けてください。

顕微鏡的血尿

肉眼的血尿に対して、尿の色に特徴はないながらも、血尿とされるものがあります。これらは、顕微鏡検査で判明するため顕微鏡的血尿といいます。一般に、顕微鏡的血尿で悪性腫瘍の見つかる頻度は、0.5%前後と言われています。

0.5%と言えば少ないようですが、1,000人のうち5人には悪性腫瘍が発見されるのです。悪性腫瘍が無いことを確かめるためにも、一度検査されることをお勧めします。